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AIR/空

 空を見上げて上を見る。
 一面青色だった。
 僕の目指す空だった。

「あの空の向こうにはね……」

 僕の隣の少女が話し出す。

「翼を持った女の子がいるんだよ~」

 見上げた空は、空だった。

「私もそらみたいに翼があれば会いに行けるのにな~」

 ……人が悲しくなった。


「どこかにな、翼を持った少女がいるんだ」

 横で目つきの悪い男が話し出す。

「俺は……そいつを探してる。何でだかわからんがな。って、こいつに喋ったところで意味ないか」

 空の向こうは、やっぱり空だった。


 一人で空を見上げた。
 いつもの空。
 だけど。
 何だか吸い込まれそうで……

 空が怖くなった。


 目の前で男が消えた。
 そして、大好きなみすずは生き返った。
 うれしい。
 だけど。
 あの男の心の声が、僕の何かを揺り動かしていた。

「往人さん……!」

 みすずの悲鳴もまた、同じだった。


 僕は空を見上げた。
 久しぶりの空は、僕と同じ色だった。
 一人ぼっちのみすずは、再び日に日に悪くなっていく。
 僕は何もできない。
 こんな姿で……

 ?
 こんな姿だと……!?


 気付けば朝だった。
 みすずの目に、再び生気が戻っていた。
 僕はうれしかった。


 少女は立ち上がっていた。

「もうちょっと、もうちょっとや!」

 僕の横で母親はそういう。

「うん、観鈴ちん、ふぁいと」

 一歩、また一歩。

 ぴたっ。

「ん?どないしたん、観鈴?」
「ぶいっ!」
「ぶいっ!もうちょっとやで」
「にはは~」
「そやそや、もうちょっとや」

 でもみすずは動かなかった。

「……もういいよね?」


 僕は一人だった。
 堤防の上に、一人だった。
 上には空。
 ……帰ろう、あの空へ。


 俺は空にいた。
 青色の中だった。

「……さん」

 気持ちよかった。
 もう少し眠りたい。

「……きとさん」

 やっと終わったのだから。

「往人さん!」
「ん……」

目の前には笑顔の少女がいた。