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place of happiness/3話

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「ANGELSね……いつ見てもネーミングセンスのない名前だこと」

 手元には上から回ってきた紙切れが一枚。内容は次の指令に関する簡単な説明だけ。その中で唯一使われている英語がANGELSだった。

 ――天使達――

「気が違った奴らが付けるにはぴったりだけど。自尊心たっぷりだもんなぁ……馬鹿みたいに」

 所詮イカれた奴らなんて常にトリップしている阿呆なんだから、どんな名前を付けたって極まっているのだろうが。

 神の使いである、天使―ANGEL―……白い羽を背に生やし、ヒトを導くとされている。
 無論実在するわけじゃないのは誰だって知っている(ひょっとしたら見えないだけかもしれないけど)。ゲームやら漫画やら神話やら、ヒトが作り上げるセカイの中でしか本来存在しえない。

 だが。
 巨大都市東京にて、天使の名を使う者たちがいる。これは確かである。

 ANGELSに関する詳細は警視庁でも未だに掴みあぐねているが、一つはっきりわかっていることがある。

 紛れもない犯罪者集団――それも、飛びっきりの危険をはらんだ。

「で、今回がその基盤と。わっかりやすいわねーほんと、いつも」

 目一杯吸い込んだ息を大げさに吐き出す。

 奴らは変わらない。何年も何年も。若者を快楽と絶望に陥れる禁断の林檎を資金源に肥大し続け、歪みをばらまく姿は悪魔と呼ぶ方が相応しい。

 麻薬と犯罪。二つが絡み合った典型にして最悪パターンがANGELSだ。

「愚痴ばっかこぼしてもしかたないか」

 私自身やらなきゃいけないことだし、と気持ちを切り替える。

 今回の内容は、新型麻薬の取引に関する調査。可能なかぎりの情報を集めないといけない。

 奴らを叩くのは、私の運命――

 始まりの一歩を踏み出す。夜を包む闇が身体にまとわりつくような気がした。


 -------



 目一杯有毒な気体を肺にため込み、ニコチンを味わってから紫煙を吐き出す。最近だとマルボロですら足りないと感じてしまう。職業柄、煙草はなくてはならない存在だがここまで毒されるのもいかがなものだろうか。
 再び、吸い込んでは吐き出す。机の片隅に置かれた灰皿には残骸がありえないほどたまっている。

「東野さーん、吸いすぎるともれなく各種ガンがプレゼントされますよー」

 付き合いの長い日吉君が横を通りかかり、こんな言葉をくれた。

「わかってるんだけどねえ……」
「また心配事……ああ、彼女、ですか?」
「まあ、ね」

 フィルター間近まで迫っていた火をもみ消し、新しい煙草を手に取る。

「大丈夫ですよ」
「大丈夫だとは思ってるんだがね……やはり、早すぎた」
「いつかは通る道じゃないですか。早い遅い関係ないですよ」
「わかってる。わかっているんだが……」

 やはり時期尚早、だろう。人出が足りないからと雫に頼むのは、間違いなく早すぎた。どれだけ彼女に能力があろうと、早すぎたのだ。

 まだ、あれから10年しかたっていないのだから。
 風化が完了しているわけが無い。

「……東野さん、現場にいるのは彼女なんですから、ね? 心配なんかするくらいなら神様にお願いでもしたほうがまだいいんじゃないですか?」
「神、ね……」

 日吉君には悪いが、そんなもの信じられなかった。信じるだけ無駄だ。
 あんなことを許しておいて、神も何もありはしない。

 それでも。
 もし、もしいるのなら、10年前貴方は何をした、と問い詰めてやりたい。
 そして、罪を償ってほしい。貴方の子を名乗る奴らの罪を。
 最後に、あの子に祝福を……

 燃え尽きる寸前に吸い込んで深く吐き出した煙は、もはや何の味も感じなかった。
「ANGELSね……いつ見てもネーミングセンスのない名前だこと」

 手元には上から回ってきた紙切れが一枚。内容は次の指令に関する簡単な説明だけ。その中で唯一使われている英語がANGELSだった。

 ――天使達――

「気が違った奴らが付けるにはぴったりだけど。自尊心たっぷりだもんなぁ……馬鹿みたいに」

 所詮イカれた奴らなんて常にトリップしている阿呆なんだから、どんな名前を付けたって極まっているのだろうが。

 神の使いである、天使―ANGEL―……白い羽を背に生やし、ヒトを導くとされている。
 無論実在するわけじゃないのは誰だって知っている(ひょっとしたら見えないだけかもしれないけど)。ゲームやら漫画やら神話やら、ヒトが作り上げるセカイの中でしか本来存在しえない。

 だが。
 巨大都市東京にて、天使の名を使う者たちがいる。これは確かである。

 ANGELSに関する詳細は警視庁でも未だに掴みあぐねているが、一つはっきりわかっていることがある。

 紛れもない犯罪者集団――それも、飛びっきりの危険をはらんだ。

「で、今回がその基盤と。わっかりやすいわねーほんと、いつも」

 目一杯吸い込んだ息を大げさに吐き出す。

 奴らは変わらない。何年も何年も。若者を快楽と絶望に陥れる禁断の林檎を資金源に肥大し続け、歪みをばらまく姿は悪魔と呼ぶ方が相応しい。

 麻薬と犯罪。二つが絡み合った典型にして最悪パターンがANGELSだ。

「愚痴ばっかこぼしてもしかたないか」

 私自身やらなきゃいけないことだし、と気持ちを切り替える。

 今回の内容は、新型麻薬の取引に関する調査。可能なかぎりの情報を集めないといけない。

 奴らを叩くのは、私の運命――

 始まりの一歩を踏み出す。夜を包む闇が身体にまとわりつくような気がした。


 -------



 目一杯有毒な気体を肺にため込み、ニコチンを味わってから紫煙を吐き出す。最近だとマルボロですら足りないと感じてしまう。職業柄、煙草はなくてはならない存在だがここまで毒されるのもいかがなものだろうか。
 再び、吸い込んでは吐き出す。机の片隅に置かれた灰皿には残骸がありえないほどたまっている。

「東野さーん、吸いすぎるともれなく各種ガンがプレゼントされますよー」

 付き合いの長い日吉君が横を通りかかり、こんな言葉をくれた。

「わかってるんだけどねえ……」
「また心配事……ああ、彼女、ですか?」
「まあ、ね」

 フィルター間近まで迫っていた火をもみ消し、新しい煙草を手に取る。

「大丈夫ですよ」
「大丈夫だとは思ってるんだがね……やはり、早すぎた」
「いつかは通る道じゃないですか。早い遅い関係ないですよ」
「わかってる。わかっているんだが……」

 やはり時期尚早、だろう。人出が足りないからと雫に頼むのは、間違いなく早すぎた。どれだけ彼女に能力があろうと、早すぎたのだ。

 まだ、あれから10年しかたっていないのだから。
 風化が完了しているわけが無い。

「……東野さん、現場にいるのは彼女なんですから、ね? 心配なんかするくらいなら神様にお願いでもしたほうがまだいいんじゃないですか?」
「神、ね……」

 日吉君には悪いが、そんなもの信じられなかった。信じるだけ無駄だ。
 あんなことを許しておいて、神も何もありはしない。

 それでも。
 もし、もしいるのなら、10年前貴方は何をした、と問い詰めてやりたい。
 そして、罪を償ってほしい。貴方の子を名乗る奴らの罪を。
 最後に、あの子に祝福を……

 燃え尽きる寸前に吸い込んで深く吐き出した煙は、もはや何の味も感じなかった。


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